年末調整の時期になると、勤務先から「保険料控除申告書」を渡され、保険会社から届いた控除証明書を見ながら「生命保険料控除って、結局いくら戻るの?」と気になる人が多くなります。

しかも2026年(令和8年分)は、年齢23歳未満の扶養親族がいる人について、一般の生命保険料の控除の上限が4万円から6万円に上がる特例が始まりました。この記事では、国税庁のタックスアンサーと「令和8年分 年末調整のしかた」をもとに、生命保険料控除の計算方法、所得税と住民税の上限、戻る金額の早見表とモデルケース、年末調整で間違えやすい点を整理します。計算はモデルケースの概算で、個人の税額を示すものではありません。

生命保険料控除とは:3つの区分と「新契約・旧契約」

生命保険料控除は、その年に支払った生命保険料などに応じて、所得から一定の金額を差し引ける所得控除です(国税庁 No.1140)。保険料が丸ごと戻るわけではなく、差し引いた所得に税率をかけた分だけ、税金が軽くなります。

3つの区分ごとに計算する

  • 一般の生命保険料:死亡保障などの生命保険(旧契約では医療保険なども含む)
  • 介護医療保険料:医療保険・介護保険など(新契約だけの区分)
  • 個人年金保険料:一定の条件を満たす個人年金保険

保険料は区分ごとに合計し、区分をまたいで振り替えることはできません(令和8年分 年末調整のしかた)。保険金の受取人のすべてが、本人か配偶者・その他の親族(個人年金保険は本人か配偶者)であることも条件です。

2012年1月1日を境に「新契約」と「旧契約」に分かれる

平成24年(2012年)1月1日以後に結んだ契約は「新契約」、平成23年(2011年)12月31日以前の契約は「旧契約」として、計算式と上限が違います。控除証明書には新・旧のどちらかが書いてあるので、まずそこを確認します。

計算方法(所得税):新契約・旧契約・2026年の特例

所得税の上限:新契約は各区分最高4万円、旧契約は最高5万円。3区分の合計は最高12万円。

※2026年・2027年分(令和8・9年分)は、年齢23歳未満の扶養親族がいる人の新契約の一般の生命保険料が最高6万円。合計12万円は変わりません。

国税庁 No.1140 と「令和8年分 年末調整のしかた」の計算式です。年間の保険料は、配当金や割戻金を受け取った場合はその分を引いた金額を使います。

新契約(一般・介護医療・個人年金の各区分)

年間の支払保険料控除額
2万円以下支払保険料の全額
2万円超〜4万円以下支払保険料×1/2+1万円
4万円超〜8万円以下支払保険料×1/4+2万円
8万円超一律4万円

2026年からの特例:23歳未満の扶養親族がいる人の新契約(一般の生命保険料)

年間の新生命保険料控除額
3万円以下支払保険料の全額
3万円超〜6万円以下支払保険料×1/2+1万5,000円
6万円超〜12万円以下支払保険料×1/4+3万円
12万円超一律6万円

この特例は、一般の生命保険料の新契約だけが対象で、介護医療保険料・個人年金保険料の計算は変わりません。国税庁の「令和8年分 年末調整のしかた」では、対象は令和8・9年分とされています。

  • 16歳未満の子も対象:16歳未満の扶養親族は扶養控除の対象になりませんが、この特例の「23歳未満の扶養親族」には含まれます(国税庁 年末調整Q&A 問11の注)
  • 年齢は12月31日の時点で判断:12月31日に子が生まれた場合も要件を満たします(同 問11)
  • 共働きの夫婦は両方が使える:同じ世帯の夫婦に23歳未満の子が1人いる場合、夫婦の両方がこの特例を受けられます(同 問7の注)。扶養控除のように「どちらか一方」ではありません

旧契約(一般・個人年金の各区分)

年間の支払保険料控除額
2万5,000円以下支払保険料の全額
2万5,000円超〜5万円以下支払保険料×1/2+1万2,500円
5万円超〜10万円以下支払保険料×1/4+2万5,000円
10万円超一律5万円

※計算で1円未満の端数が出たら切り上げます(令和8年分 年末調整のしかた)。

住民税の計算方法:上限は合計7万円・特例はない

生命保険料控除は住民税(市民税・県民税)にもありますが、計算式と上限が所得税より小さくなっています。鶴岡市の令和8年度の資料による住民税の計算式です。

新契約:年間の支払保険料控除額旧契約:年間の支払保険料控除額
1万2,000円以下全額1万5,000円以下全額
1万2,000円超〜3万2,000円以下×1/2+6,000円1万5,000円超〜4万円以下×1/2+7,500円
3万2,000円超〜5万6,000円以下×1/4+1万4,000円4万円超〜7万円以下×1/4+1万7,500円
5万6,000円超2万8,000円7万円超3万5,000円
  • 上限:新契約は各区分2万8,000円、旧契約は3万5,000円、新旧の両方を合わせる場合は2万8,000円。3区分の合計は7万円(鶴岡市・船橋市)
  • 2026年の特例は所得税だけ:総務省が公開している令和8年度地方税制改正の要望資料では、23歳未満の扶養親族がいる場合の2万円の上乗せは「令和8年分所得税において講じられた」措置とされています。住民税の上限は、子どもがいても2万8,000円のままとして計算します

住民税の所得割の標準税率は10%(総務省)なので、住民税の控除額の10%ぶん、翌年度の住民税が下がる目安になります。

生命保険料控除でいくら戻る?早見表

戻る(軽くなる)金額の目安 = 所得税の控除額 × 所得税の税率 + 住民税の控除額 × 10%

所得税と住民税で控除額が違うので、医療費控除のように「控除額×(所得税率+10%)」とまとめて計算できない点に注意します。所得税の分は年末調整(または確定申告)で戻り、住民税の分は翌年度の税額が下がります。

年間の保険料ごとの控除額(新契約・一般の生命保険料)

サジェストでも多い「8万円」を含め、年間の保険料ごとに上の計算式で当サイトが計算した控除額です。

年間の保険料所得税の控除額所得税(23歳未満の扶養親族あり)住民税の控除額
2万円2万円2万円1万6,000円
4万円3万円3万5,000円2万4,000円
6万円3万5,000円4万5,000円2万8,000円
8万円4万円5万円2万8,000円
10万円4万円5万5,000円2万8,000円
12万円4万円6万円2万8,000円

税率ごとの「戻る金額」の目安

新契約の一般の生命保険料を年8万円払った場合と、3区分とも上限まで使った場合(所得税12万円・住民税7万円)の目安です(所得税の税率は国税庁 No.2260、復興特別所得税は含めない)。

課税される所得金額所得税の税率一般8万円(扶養親族なし)一般8万円(23歳未満の扶養親族あり)3区分とも上限
1,000円〜194万9,000円5%4,800円5,300円1万3,000円
195万円〜329万9,000円10%6,800円7,800円1万9,000円
330万円〜694万9,000円20%1万800円1万2,800円3万1,000円
695万円〜899万9,000円23%1万2,000円1万4,300円3万4,600円
900万円〜1,799万9,000円33%1万6,000円1万9,300円4万6,600円

※課税される所得金額は、年収から給与所得控除や社会保険料控除などを引いたあとの金額です。会社員なら源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」から「所得控除の額の合計額」を引くと、おおよその金額が出ます。同じ税率の区分は医療費控除の計算方法やiDeCoの節税額の計算の記事でも使っています。

12万円
所得税の生命保険料控除の合計の上限(3区分の合計)
7万円
住民税の生命保険料控除の合計の上限
6万円
2026・2027年分、23歳未満の扶養親族がいる人の一般枠(所得税)の上限

4つのモデルケースで計算

上の計算式に当てはめた、当サイトのモデルケースです(すべて新契約・復興特別所得税は含めない概算)。

モデル支払った保険料(年間)控除額(所得税/住民税)戻る金額の目安
Aさん:会社員・課税所得250万円(所得税10%)・子なし一般6万円3万5,000円/2万8,000円6,300円(所得税3,500円+住民税2,800円)
Bさん:Aさんと同じ条件で、小学生の子(扶養親族)あり一般6万円4万5,000円/2万8,000円7,300円(所得税4,500円+住民税2,800円)
Cさん:会社員・課税所得400万円(所得税20%)・高校生の子あり一般12万円・介護医療5万円・個人年金10万円12万円(合計13万2,500円→上限)/7万円(合計8万2,500円→上限)3万1,000円(所得税2万4,000円+住民税7,000円)
Dさん:会社員・課税所得300万円(所得税10%)旧契約の一般15万円だけ5万円/3万5,000円8,500円(所得税5,000円+住民税3,500円)

モデルケースから分かること

  • 特例で増えるのは所得税の分だけ:AさんとBさんの差は、所得税の控除額の差1万円×10%=1,000円です。住民税の分は変わりません
  • 合計の上限に当たると特例の効果は小さくなる:Cさんは特例がなくても所得税の合計が11万2,500円(一般4万円+介護医療3万2,500円+個人年金4万円)で、特例による増加は7,500円(上限の12万円まで)。戻る金額の差は1,500円です。3区分とも上限まで使っている人は、合計12万円で頭打ちになり、特例の上乗せが効かないこともあります
  • 旧契約は上限が大きい:Dさんのように旧契約で年10万円を超えて払っている人は、所得税5万円・住民税3万5,000円まで控除できます

なお、控除を増やすために保険に入る・保険料を増やすと、増えた保険料のほうが戻る金額よりずっと大きくなります。保険は、まず公的保障で足りない分を考えてから選ぶものです。その考え方は保険の見直しの考え方(公的保障と必要保障額)の記事で解説しています。

新契約と旧契約の両方があるときの上限

同じ区分に新契約と旧契約の両方がある場合、所得税では次の①〜③のうちいちばん大きい金額がその区分の控除額になります(令和8年分 年末調整のしかた)。

選び方所得税の上限住民税の上限
①新契約だけで計算4万円(一般で23歳未満の扶養親族ありは6万円)2万8,000円
②旧契約だけで計算5万円3万5,000円
③新契約と旧契約の合計4万円(一般で23歳未満の扶養親族ありは6万円)2万8,000円

国税庁 No.1140 によると、旧契約の保険料が6万円を超える場合は、旧契約だけで計算した金額(最高5万円)が大きくなります。ただし2026年からは、23歳未満の扶養親族がいて新契約の一般の生命保険料もある場合、③の上限が6万円になるため、③のほうが大きくなることがあります。

当サイトの計算例:旧契約の一般15万円+新契約の一般4万円を払い、23歳未満の扶養親族がいる人は、②が5万円、③が旧5万円+新3万5,000円=8万5,000円→上限6万円なので、所得税の控除額は6万円です。住民税は②の3万5,000円が③の上限2万8,000円より大きいので、3万5,000円になります。

年末調整の保険料控除:書き方と注意点

保険料控除申告書に書いて、控除証明書を付ける

会社員は、勤務先に「給与所得者の保険料控除申告書」を出すと、年末調整で生命保険料控除を受けられます。2026年分の申告書には、年齢23歳未満の扶養親族の有無と、その人の氏名などを書く欄があり、特例用の計算式(計算式Ⅱ)が追加されています(国税庁 令和8年分の申告書・年末調整のしかた)。昨年の書き方のまま一般の生命保険料を計算すると、上限4万円で止めてしまうことがあるので注意します。

  • 証明書が要るもの:新契約の保険料は金額にかかわらず、旧契約の一般の生命保険料は1契約の年間保険料が9,000円を超えるものについて、保険会社などが出す証明書(または電子データ)を付けます
  • 証明書が間に合わないとき:交付を請求中などで確認できない場合でも、翌年1月末日までに出すことを条件に、控除して年末調整してよいことになっています
  • 勤務先の団体保険:勤務先を対象とする団体特約の保険料などは、勤務先で金額を確認すれば証明書が要らない場合があります
  • 家族名義の契約:妻や子が契約者でも、実際に保険料を払っているのが本人で、受取人の条件を満たせば、本人の控除の対象になります(年末調整Q&A 問8)

出し忘れた・あとで子が生まれたとき

年末調整が終わったあとに保険料控除申告書を出した場合も、翌年1月に源泉徴収票が交付されるまでなら年末調整をやり直せます。間に合わなかったときは、確定申告で還付を受ける方法もあります(年末調整Q&A 問11・問12)。

同じ申告書で出すほかの控除

保険料控除申告書には、地震保険料控除・社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除(iDeCoの掛金など)も書きます。iDeCoの掛金で税金が軽くなる仕組みはiDeCoの節税はいくら?、医療費控除は年末調整では受けられず確定申告が必要なので医療費控除の計算方法をご覧ください。住宅ローン控除も2年目からは年末調整で手続きします。くわしくは姉妹サイトの不動産研究所「住宅ローン控除2026|いくら戻る?」で解説しています。

いま入っている保険の保障内容を見直したい人は、無料の保険相談がなぜ無料でできるのか、その仕組みと注意点を保険の無料相談はなぜ無料?の記事にまとめています。

出典・注意書き

基準日:2026年11月時点(各ページ・資料は2026年11月2日に確認。国税庁のタックスアンサーは令和8年4月1日現在法令等)

ご注意

  • この記事は生命保険料控除の制度の一般的な解説で、戻る金額はモデルケースの概算です。実際の税額は、所得やほかの控除の状況で変わります。個別の税額や、ある保険が控除の対象になるかどうかは、勤務先・税務署・税理士にご確認ください。
  • 住民税の扱いは、お住まいの自治体の案内もあわせてご確認ください。2026年分の特例の対象年分や住民税の扱いは、今後の税制改正で変わることがあります。
  • 当サイトは特定の保険への加入をおすすめするものではありません。個人年金保険など貯蓄性のある保険は、途中で解約すると受け取る金額が払った保険料を下回ることがあります。関連記事で紹介しているiDeCoで投資信託を選ぶ場合も、元本割れになることがあります。
  • 保険の加入・見直しや、どの控除を使うかの最終判断は、ご自身でお願いします。

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