年末調整の書類にある「小規模企業共済等掛金控除」の欄。ここにiDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金を書くと税金が安くなる、と聞いても、「いくら安くなるのか」は人によって大きく違います。
この記事では、厚生労働省・国税庁・iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)の資料をもとに、節税額の目安を出す計算式と、会社員・自営業・専業主婦など4人のモデルケースの計算、2026年12月分からの掛金の上限アップ、手数料と受け取るときの税金を整理します。計算はモデルケースの概算で、個人の税額を示すものではありません。特定の金融機関や商品をすすめるものでもありません。
iDeCoの節税額の計算方法:いくら安くなる?
計算式:節税額の目安 = 1年の掛金 ×(所得税の税率 + 住民税の税率10%)
所得税の税率は、課税される所得金額(年収から給与所得控除や社会保険料控除などを引いたあとの金額)で決まります。会社員なら、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」から「所得控除の額の合計額」を引くと、おおよその金額が出ます。住民税の所得割の標準税率は10%です(総務省)。
| 課税される所得金額 | 所得税の税率 | 住民税と合わせて |
|---|---|---|
| 1,000円〜194万9,000円 | 5% | 15% |
| 195万円〜329万9,000円 | 10% | 20% |
| 330万円〜694万9,000円 | 20% | 30% |
| 695万円〜899万9,000円 | 23% | 33% |
| 900万円〜1,799万9,000円 | 33% | 43% |
| 1,800万円〜3,999万9,000円 | 40% | 50% |
| 4,000万円以上 | 45% | 55% |
※所得税の税率は国税庁 タックスアンサーNo.2260(令和8年4月1日現在法令等)。この記事の計算は、復興特別所得税を含めない目安です。掛金の控除で課税所得が区分の境目をまたぐ場合は、税率が途中で変わります。
iDeCoの節税額の早見表(月1万円あたり)
当サイトで計算した、掛金月1万円(1年12万円)あたりの節税額の目安です。月2万円なら2倍、月5,000円なら半分にします。
| 所得税の税率 | 住民税と合わせて | 1年の節税額の目安(掛金12万円) |
|---|---|---|
| 5% | 15% | 1万8,000円 |
| 10% | 20% | 2万4,000円 |
| 20% | 30% | 3万6,000円 |
| 23% | 33% | 3万9,600円 |
| 33% | 43% | 5万1,600円 |
同じ「所得控除」で税金が変わる制度に、ふるさと納税があります。上限の出し方はふるさと納税の上限の出し方でまとめています。
4人のモデルケースで計算:会社員・自営業・専業主婦
上の計算式に当てはめた、当サイトのモデルケースです(復興特別所得税は含めない概算)。
| モデル | 課税所得・税率 | 掛金 | 1年の掛金 | 節税額の目安(1年) |
|---|---|---|---|---|
| Aさん:会社員(企業年金なし) | 300万円・所得税10% | 月2万3,000円 | 27万6,000円 | 5万5,200円(×20%) |
| Aさん:改正後の上限まで | 同上 | 月6万2,000円 | 74万4,000円 | 14万8,800円(控除後225.6万円で10%のまま) |
| Bさん:自営業 | 500万円・所得税20% | 月7万5,000円 | 90万円 | 27万円(×30%) |
| Cさん:会社員 | 150万円・所得税5% | 月5,000円 | 6万円 | 9,000円(×15%) |
| Dさん:専業主婦(所得なし) | 所得税・住民税なし | 月2万3,000円 | 27万6,000円 | 0円 |
節税にならない人:所得がないと控除はゼロ
iDeCo公式サイトは、課税所得がない人は掛金の所得控除を受けられないこと、控除は掛金を出した本人の所得からだけ引けることを説明しています。Dさんのように所得がない場合、家族の所得から引くこともできません。運用益の非課税と、受け取るときの控除は残ります。
上限の6.2万円まで出す前に
Aさんが上限の月6万2,000円まで出すと、節税額の目安は約3倍になります。ただし、手取りから毎月6万2,000円が出ていき、iDeCoは原則として60歳になるまで受け取れません。節税額が増えることと、家計に合うことは別に考えます。
2026年12月分から掛金の上限が上がる(6.2万円・7.5万円)
厚生労働省によると、2026年12月分(2027年1月に引き落とされる掛金)から、iDeCoの掛金の上限(拠出限度額)が引き上げられます。
| 区分 | 今 | 2026年12月分から |
|---|---|---|
| 第1号被保険者(自営業・フリーランスなど) | 月6万8,000円 | 月7万5,000円(国民年金基金などと合わせた枠) |
| 第2号被保険者(会社員・公務員など)勤務先に企業年金がない | 月2万3,000円 | 月6万2,000円 |
| 第2号被保険者 企業年金がある | 企業年金の種類で違う | 企業年金などと合わせて月6万2,000円(共通の上限) |
| 第3号被保険者(専業主婦・主夫など) | 月2万3,000円 | 引き上げの対象外 |
あわせて、国民年金の被保険者でなくなったあとも、一定の要件(老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受け取っていない、など)を満たせば、70歳になるまで加入して掛金を出せるようになります。掛金を増やしたい場合は、加入している金融機関(運営管理機関)での手続きが必要です。
iDeCoの節税の仕組み:税の扱いは三つ
iDeCoは、自分で掛金を出し、自分で選んだ商品で運用する私的年金です。税の扱いは次の三つです(厚生労働省 Webマガジン 2026年10月20日)。
| タイミング | 税の扱い |
|---|---|
| 掛金を出すとき | 掛金の全額が所得控除(国税庁の分類では「小規模企業共済等掛金控除」) |
| 運用しているとき | 運用で増えた分(運用益)は非課税 |
| 受け取るとき | 一時金なら退職所得控除、年金なら公的年金等控除の対象 |
この記事では、数字にしやすい一つ目(掛金の所得控除)を中心に計算します。
iDeCoの手数料:2027年1月から月120円に
| 手数料 | 金額 |
|---|---|
| 加入するとき(国民年金基金連合会) | 2,829円(変更なし) |
| 加入中(国民年金基金連合会) | 今:掛金を出すたびに105円 → 2027年1月26日の引落し分から月120円 |
| 1年あたり(2027年以降の国民年金基金連合会分) | 120円×12か月=1,440円 |
| 運営管理機関・信託銀行の手数料 | 金融機関によって違う |
Cさん(節税額の目安9,000円)の場合、国民年金基金連合会の分だけで年1,440円、初年度は加入時の2,829円も加わります。掛金が小さく税率が低いほど、手数料の重みは大きくなります。金融機関の手数料は、加入前に各社の公式サイトで確認してください。
年末調整で戻るのはいつ?受け取るときの税金
年末調整・確定申告で戻ってくる時期
- 会社員:年末調整で掛金の証明書を出すと、所得税はその年のうちに調整されます。住民税は翌年度分が下がります(掛金を給与天引きする場合は、勤務先の手続きによります)
- 自営業など:確定申告で「小規模企業共済等掛金控除」の欄に記入します。令和8年分以後の確定申告書を令和9年(2027年)1月1日以後に出す場合は、証明書の添付の代わりに、一定の事項を書いた明細書でもよくなります(国税庁 No.1135)
受け取るときは退職所得控除などを使う
iDeCoを一時金で受け取ると、退職所得とみなされます(国税庁 No.1420)。退職所得控除は、年数が20年以下なら40万円×年数(最低80万円)、20年を超えると800万円+70万円×(年数−20年)で、控除を引いた残りの2分の1に課税されます。iDeCoの一時金では、掛金を出していた期間などをもとに年数を数えます。会社の退職金と受け取る年が近いと、控除の計算が変わることがあります。年金として受け取る場合は公的年金等控除の対象です。
節税と運用は別に考える
iDeCoで投資信託を選ぶと、値動きによって元本割れになることがあります。元本確保型の商品でも、手数料を差し引くと目減りすることがあります。節税額は計算できますが、運用の結果は計算できません。投資信託の仕組みや非課税制度は、新NISAの仕組みの記事でも解説しています。
出典・注意書き
基準日:2026年10月時点(各ページ・資料は2026年10月29日に確認)
- 厚生労働省 Webマガジン「2026年12月からiDeCoがパワーアップ! 制度改正の3つのポイント」(2026年10月20日):https://www.mhlw.go.jp/web_magazine/column/20261020.html
- 厚生労働省「iDeCoの拠出限度額と加入可能年齢が引き上げられます」(リーフレット):https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001726959.pdf
- 国民年金基金連合会「iDeCo加入者に係る手数料を見直します」:https://www.ideco-koushiki.jp/library/pdf/leaflet202604.pdf
- iDeCo公式サイト「iDeCo(イデコ)の加入資格・掛金・受取方法等」:https://www.ideco-koushiki.jp/guide/structure.html
- iDeCo公式サイト「iDeCo(イデコ)をはじめるまでの4つのステップ」:https://www.ideco-koushiki.jp/start/
- 国税庁 タックスアンサーNo.2260「所得税の税率」:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
- 国税庁 タックスアンサーNo.1135「小規模企業共済等掛金控除」:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1135.htm
- 国税庁 タックスアンサーNo.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm
- 総務省「個人住民税」:https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_06.html
- 4人のモデルケース・早見表は、上の資料の税率をもとに当サイトが計算したものです(復興特別所得税は含めていません)。
ご注意
- この記事はiDeCoの税制の一般的な解説で、節税額はモデルケースの概算です。実際の税額は、所得や控除の状況で変わります。個別の税額は、税務署や税理士にご確認ください。
- iDeCoは原則として60歳になるまで受け取れません。投資信託などで運用する場合、元本割れになることがあり、元本は保証されません。
- 手数料は金融機関によって異なります。制度・税制は改正されることがあります。
- 当サイトは特定の金融機関・金融商品をおすすめするものではありません。加入や掛金の最終判断は、ご自身でお願いします。