年末が近づくと、病院や薬局の領収書を前に「医療費控除って、結局いくら戻るの?」と気になる人が増えます。よく聞く「10万円を超えたら」という話も、実は全員に当てはまるわけではありません。

この記事では、国税庁のタックスアンサーと厚生労働省の資料をもとに、医療費控除の計算方法、戻る金額の目安を出す式と4つのモデルケース、対象になる費用・ならない費用、セルフメディケーション税制との違いと2027年からの見直し、申告の期限を整理します。計算はモデルケースの概算で、個人の税額を示すものではありません。

医療費控除の計算方法:10万円か「所得の5%」を引く

計算式:医療費控除の額 =(1年間に支払った医療費 − 保険金などで補てんされる金額)− 10万円

※その年の総所得金額等が200万円未満の人は、10万円の代わりに総所得金額等の5%を引きます。控除額の上限は200万円です。

国税庁(タックスアンサーNo.1120)によると、医療費控除は、自分と、生計を一にする配偶者やその他の親族のために、その年の1月1日から12月31日までに支払った医療費が対象です。まだ払っていない医療費は、実際に払った年の対象になります。

「保険金などで補てんされる金額」とは

生命保険の入院給付金や、健康保険の高額療養費などがこれに当たります。差し引くのは、その給付の対象になった医療費の分までで、引ききれない金額が出ても、ほかの医療費からは引きません(国税庁 No.1120)。高額療養費の仕組みは保険の見直しの考え方(公的保障)の記事で解説しています。

住民税も同じ式で軽くなる

医療費控除は住民税(市民税・県民税)にもあり、広島市の解説では計算式・上限200万円とも所得税と同じです。住民税の所得割の標準税率は10%(都道府県民税4%・市町村民税6%、総務省)なので、控除額の10%ぶん、翌年度の住民税が下がる目安になります。

医療費控除でいくら戻る?戻る金額の目安と早見表

戻る(軽くなる)金額の目安 = 医療費控除の額 ×(所得税の税率 + 住民税の税率10%)

よくある誤解が「10万円を超えた分がそのまま戻ってくる」というものです。医療費控除は所得から差し引く控除(所得控除)なので、戻ってくるのは控除額に税率をかけた分です。所得税は確定申告で還付され、住民税は翌年度の税額が下がります。

当サイトで計算した、医療費控除の額10万円あたりの目安です(所得税の税率は国税庁 No.2260、復興特別所得税は含めない)。控除額が5万円なら半分、20万円なら2倍にします。

課税される所得金額所得税の税率所得税の還付住民税の軽減合計の目安
1,000円〜194万9,000円5%5,000円1万円1万5,000円
195万円〜329万9,000円10%1万円1万円2万円
330万円〜694万9,000円20%2万円1万円3万円
695万円〜899万9,000円23%2万3,000円1万円3万3,000円
900万円〜1,799万9,000円33%3万3,000円1万円4万3,000円

※課税される所得金額は、年収から給与所得控除や社会保険料控除などを引いたあとの金額です。会社員なら源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」から「所得控除の額の合計額」を引くと、おおよその金額が出ます。所得税の税率の区分はiDeCoの節税額の計算方法の記事でも使っています。

4つのモデルケースで計算:10万円以下でも使える人

上の式に当てはめた、当サイトのモデルケースです(復興特別所得税は含めない概算)。

モデル医療費と補てん引く金額医療費控除の額戻る金額の目安
Aさん:会社員・課税所得300万円(所得税10%)家族分を合わせて25万円、入院給付金3万円10万円12万円2万4,000円(所得税1万2,000円+住民税1万2,000円)
Bさん:パート・総所得金額等150万円(所得税5%)9万円、補てんなし7万5,000円(150万円×5%)1万5,000円2,250円(所得税750円+住民税1,500円)
Cさん:会社員・課税所得400万円(所得税20%)8万円(うち対象の市販薬2万円)10万円0円0円(通常の医療費控除では戻らない)
Cさん:セルフメディケーション税制を選んだ場合対象の市販薬2万円1万2,000円8,000円2,400円(所得税1,600円+住民税800円)
2.4万円
Aさん(医療費25万円・給付金3万円・所得税10%)の目安
7.5万円
総所得金額等150万円のBさんは、10万円ではなく7万5,000円を引く
2,400円
医療費10万円以下のCさんも、セルフメディケーション税制なら戻る目安

10万円以下でも使えるのは2つのパターン

  • 総所得金額等が200万円未満(Bさん):引く金額が「総所得金額等の5%」になるので、医療費が10万円以下でも控除が出ることがあります
  • 対象の市販薬を1万2,000円を超えて買った(Cさん):通常の医療費控除の代わりに、セルフメディケーション税制を選べます(次の章)

家族の医療費はまとめて計算できる

生計を一にする配偶者や親族の医療費は、支払った人がまとめて控除できます(国税庁 No.1120)。上の式のとおり、戻る金額は控除する人の税率と、引く金額(10万円か所得の5%)で変わります。家族のうち誰が支払い・申告するのがよいかは、それぞれの所得によって違うため、ご自身の数字で上の式に当てはめてみてください。

医療費控除の対象になる費用・ならない費用

国税庁(No.1122・No.1126・No.1128)の説明を、よく迷うものに絞って表にしました。

費用扱いポイント
病院・歯科の診療費、治療のための薬代(風邪薬など市販薬を含む)対象治療のためであること
通院の電車・バス代対象通院日と金額を記録しておく。小さな子の付添人の交通費も対象
タクシー代原則対象外電車・バスなどを利用できない場合は対象
自家用車のガソリン代・駐車場代対象外
入院中の病院の食事対象出前や外食は対象外
自分の都合で選んだ個室の差額ベッド料対象外寝巻き・洗面具などの身の回り品も対象外
健康診断の費用原則対象外「原則」の例外は国税庁の質疑応答で確認する
ビタミン剤など予防・健康増進のための医薬品対象外
子どもの歯列矯正対象になる場合あり発育段階の子の不正咬合の矯正など必要と認められるもの。容姿を美しくする目的は対象外
歯科の治療費のローン・クレジット払い対象ローン契約が成立した年の対象。金利・手数料の分は対象外
医師・看護師へのお礼対象外診療の対価ではないため
治療のためのあん摩マッサージ指圧・はり・きゅう・柔道整復の施術対象疲れをいやす・体調を整えるなど、治療に直接関係しないものは対象外

※治療が年をまたぐときは、それぞれの年に支払った額が、その年の対象になります(国税庁 No.1128)。健康診断の扱いは国税庁 No.1122 を参照。迷うものは、国税庁の質疑応答や税務署で確認してください。

セルフメディケーション税制との違い:どちらを選ぶ?

セルフメディケーション税制は、医療費控除の特例です。健康診断などの一定の取組をしている人が、対象の市販薬(OTC医薬品)を買ったときに使えます(国税庁 No.1129)。

くらべる点通常の医療費控除セルフメディケーション税制
対象診療費・治療のための薬代・通院費など対象の市販薬の購入費だけ
引く金額10万円(総所得金額等が200万円未満は5%)1万2,000円
控除の上限200万円8万8,000円
条件なし本人が、その年に健康診断・予防接種・がん検診などの一定の取組をしている

両方は使えない・あとから変えられない

2つはどちらか一方の選択です。国税庁 No.1129 によると、一度選んだあとに、更正の請求や修正申告でもう一方に変えることはできません。医療費の合計が10万円(または所得の5%)を大きく超える年は通常の医療費控除、病院にあまり行かず市販薬が多い年はセルフメディケーション税制、というように、両方で控除額を計算して大きいほうを見るのが基本の考え方です。なお、健康診断などの取組そのものの費用は、セルフメディケーション税制の対象に入れられません。

2027年からの見直し:対象の薬が広がる

厚生労働省によると、令和8年度の税制改正で、セルフメディケーション税制は延長・見直しされました。

  • 期限:スイッチOTC医薬品(医療用から転用された市販薬)は適用期限が撤廃(恒久化)、それ以外の医薬品は令和13年(2031年)まで延長
  • 対象の追加:令和9年(2027年)1月1日から、スイッチOTC以外の市販薬の一部(かぜ薬・解熱鎮痛薬・胃腸薬など)、OTC検査薬(コロナ検査薬など)、薬局製造販売医薬品が対象に加わる
  • 計算:1万2,000円を超えた部分を控除し、上限8万8,000円という計算は、厚生労働省の令和9年1月1日時点の資料でも同じ

2026年(令和8年分)に買った薬は、これまでどおりの対象品(レシートの印や、厚生労働省の対象品目一覧で確認)で計算します。条件の「一定の取組」には、勤務先の定期健康診断も含まれます。健康診断の結果の読み方は、姉妹サイトの健康研究所「健康診断の結果の見方」で解説しています。

申告のしかた:会社員も確定申告・5年さかのぼれる

明細書を作って確定申告書に付ける

医療費控除を受けるには、医療費控除の明細書(セルフメディケーション税制なら、その明細書)を作り、確定申告書に付けて出します(国税庁 No.1120)。会社員も同じです。健康保険から届く医療費通知があれば、明細書の記入を簡単にできます。領収書は提出しませんが、確定申告期限などから5年間は、提示や提出を求められることがあるので保管しておきます。

過去5年分までさかのぼって申告できる

税金が戻る申告(還付申告)は、確定申告の期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間出せます(国税庁 No.2030)。2026年分なら2027年1月1日から出せます。過去に医療費が多かった年に申告していなかった場合も、5年以内なら間に合います。

副業がある人は、20万円以下の所得も書く

医療費控除のために確定申告をするときは、20万円以下の副業の所得も合わせて申告します。詳しくは副業20万円ルールの6つの誤解をご覧ください。所得控除で税金が軽くなる仕組みは、ふるさと納税の上限の出し方とも共通しています。

出典・注意書き

基準日:2026年11月時点(各ページ・資料は2026年11月1日に確認。国税庁のタックスアンサーは令和8年4月1日現在法令等)

ご注意

  • この記事は医療費控除の制度の一般的な解説で、戻る金額はモデルケースの概算です。実際の税額は、所得や控除の状況で変わります。個別の税額や、ある費用が対象になるかどうかは、税務署や税理士にご確認ください。
  • 住民税の扱いは自治体の案内もあわせてご確認ください。制度・税制は改正されることがあります。
  • 関連記事で紹介しているiDeCoなどで投資信託を選ぶ場合、元本割れになることがあります。
  • 申告するかどうか、どちらの制度を選ぶかの最終判断は、ご自身でお願いします。

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