令和8年度の国の一般会計の当初予算は122兆3,092億円です(その後の補正予算は含みません)。この記事では、まず国の予算の内訳を財務省の資料で確かめ、次に、お金の流れを図でたどれるサイト「政府予算ビュー」の使い方を、児童手当を例に説明します。

政府予算ビューは、政党のチームみらいが運営する、政府公式ではないサイトです。この記事は特定の政党や政策を応援するものでも、批判するものでもありません。予算を増やすべきか減らすべきかも論じません。ツールの事実と使い方、数字を読むときの注意点をまとめます。

国の予算はいくら?令和8年度の内訳

財務省によると、令和8年度の一般会計の当初予算は122兆3,092億円で、2026年4月7日に政府案どおり成立しました。社会保障・国債費・地方交付税交付金等の3つで、歳出の7割を超えます(31.9%+25.6%+17.1%=74.6%)。

歳出(使いみち)金額割合
社会保障39兆559億円31.9%
国債費(国の借金の返済と利払い)31兆2,758億円25.6%
地方交付税交付金等20兆8,778億円17.1%
防衛関係費8兆9,843億円7.3%
公共事業6兆1,078億円5.0%
文教及び科学振興6兆406億円4.9%
その他9兆9,670億円8.1%
歳入(お金の入り口)金額割合
租税及び印紙収入83兆7,350億円68.5%
公債金(国の借金)29兆5,840億円24.2%
その他収入8兆9,902億円7.4%

計数は四捨五入のため、合計と合わないことがあります。個人の税金の仕組みについては、ふるさと納税の上限の出し方でも解説しています。

政府予算ビューとは:誰が運営しているか

政府予算ビューは、行政事業レビューのデータや財務省の予算書などをつないで、「国の予算は、どこから来て、どこへ行くのか」を図や表で見られるようにしたサイトです。トップページには、5,000超の事業と2万超の支出先(延べ9.9万件の記載)を扱うと書かれています。

  • 運営者:利用規約に「チームみらいが運営する」と書かれています(最終更新2026年10月19日)。
  • 開発の経緯:開発者の一人は2026年1月27日の投稿で、チームみらいのエンジニアチームの活動として開発中だと説明しています。同じ投稿には、予算の効率化につなげたいという考えも書かれています。
  • プログラム:GitHubで公開されています(AGPL-3.0)。
  • データ:国の公開データを、運営者が編集・加工したものです。

作り手が政党であることは、数字や評価を読むときの前提として知っておきたい点です。

画面は次の6つが主なビューです。このほか、概算要求・租税特別措置・国民負担・財政余力の補助ビューがあり、「試作」と表示されています。

ビューできること
サンキー図歳入から支出先までの流れを1つの図でたどる
バブル図事業を内容の近さで配置し、予算規模やAI評価を切り替えて比べる
評価一覧独自基準のAI評価(試行)と執行透明性を事業ごとに見る
委託構造事業ごとの支出先・再委託先の構造を見る
事業者法人ごとの受注額や契約方式を見る
基金残高・支出・国庫返納・終了予定などを見る

行政事業レビューとは:公式サイトとの違い

行政事業レビューとは、各府省庁が、予算や基金を用いて行う原則すべての事業を、毎年度自ら点検して公表する取り組みです。その結果を集めた政府のデータベースが「行政事業レビュー見える化サイト(RSシステム)」です。政府予算ビューは、このデータなどを元にした別のサイトです。

行政事業レビュー見える化サイト政府予算ビュー
運営政府(内閣官房)政党のチームみらい(民間のサイト)
中身各府省が点検して公表したシート公式データに予算書などをつないで編集・加工
見方シートを検索して読む。府省ごとの集計、CSVの提供流れの図、独自のAI評価、法人別の一覧など
使いどころ正式な内容を確かめる先全体の見当をつける入口

使い方:サンキー図の読み方

サンキー図は、左から右へお金が流れる図で、帯の太さが金額です。左から順に、歳入→会計→所管(府省庁)→項・目(予算書の区分)→事業→支出先と並びます。

政府予算ビューのサンキー図の画面。左から歳入、会計、所管、項、事業の順に帯が流れている
画面:チームみらい 政府予算ビュー(https://rs-vis.team-mir.ai/・2024年度決算の表示・2026年11月4日確認)。元データは行政事業レビュー見える化サイト、財務省 予算書・決算書データベースなどで、運営者が編集・加工したものです。
  1. トップページから「サンキー図」を開く
  2. 右上で「決算」「2024年度」など、見たい種類と年度を選ぶ
  3. 検索欄に事業名や支出先の名前を入れて、候補から選ぶ
  4. 左に出るパネルのタブ(会計・項・ブロック・支出先など)を切り替える

実例:児童手当のお金を追う

身近な例として、決算の2024年度で「児童手当等交付金」を検索しました。

政府予算ビューで児童手当等交付金に必要な経費を選んだときの詳細パネル。1.40兆円、こども家庭庁と表示されている
画面:チームみらい 政府予算ビュー(https://rs-vis.team-mir.ai/・2026年11月5日確認)。元データは行政事業レビュー見える化サイトなどで、運営者が編集・加工したものです。
たどる順画面の表示(2024年度決算)
会計年金特別会計(予算のタブでは子ども・子育て支援勘定)
所管内閣府及び厚生労働省
項児童手当等交付金
事業児童手当等交付金に必要な経費(こども家庭庁・予算事業ID 6494)1.40兆円
支出先市町村 1.40兆円 → 児童手当受給者 1.40兆円

公式のレビューシートには、支出先の数として市町村1,741、児童手当受給者778万9,939と書かれています。支出先の一覧で名前が出るのは上位10市で、残りの1,731件は「その他」1.20兆円にまとめられています。サイトの説明によると、「その他」は行政側が上位以外をまとめて記載したものです。

公式シートの執行額は、2023年度が約1兆1,482億円、2024年度が約1兆4,012億円、2025年度が約2兆23億円です(億円未満切り捨て・2026年11月5日の表示)。シートには、2024年10月から支給対象を高校生年代まで広げたことなど、制度の拡充も書かれています。

公式資料との照合結果

公式資料が読めた項目について、当サイトで照合しました。全項目を調べたものではありません。

項目政府予算ビューの表示公式の資料
令和8年度 一般会計122.31兆円122兆3,092億円(財務省)
令和8年度 公債金29.58兆円29兆5,840億円(財務省)
令和8年度 国債費31.28兆円31兆2,758億円(財務省)
令和8年度 消費税26.69兆円26兆6,880億円(財務省)
児童手当 2024年度執行額1,401,293,745,413円1,401,293,745千円(RSシステム)
児童手当 支出先のうち横浜市327.26億円32,726,137千円(RSシステム)
文部科学省 2024年度 一般会計の支出6.64兆円6,644,291百万円(文部科学省)

読むときに気をつける4つの点

① 年度がずれる

レビューシートの年度は実績の年度と一つずれます。2025年版シートに載るのは2024年度の実績です。サイトの2026年度の表示は、予算書の当初予算と2025年版シートの翌年度要求額をつないだもので、画面にも「成立した予算どうしの一致ではありません」と書かれています。

② 国の予算のすべてが「事業」として見えるわけではない

開発側の説明(GitHubのREADME)では、レビュー対象事業は国の全予算の約27%で、国債費や地方交付税などは対象外とされています。2024年度決算の図には「未突合(対応づけ漏れの可能性)」12.18兆円という区分もあります。公式サイトも、シートの集計額は国の予算書・決算書の数値と一致しないことがあると説明しています。

また、サンキー図の合計(2026年度当初で288.14兆円)は特別会計も含み、歳入には会計間の受け入れも入ります。ニュースの「122兆円」と同じ範囲の数字ではありません。

③ 同じお金を二重に数えない

児童手当の市町村1.40兆円と受給者1.40兆円は同じお金です。サイトの説明にも、直接の支出と再委託は同じお金を二重に数えることがあるので合算に注意するよう書かれています。公式サイトも、支出先情報には間接的な支出先への支出が含まれると説明しています。

④ 事業ごとの「歳入」は財源そのものとは限らない

児童手当のパネルの歳入タブには、保険収入(年金)7,724.13億円、拠出金等収入(年金)3,291.37億円などが並びます。これを見ると、年金の保険料で児童手当を払っているように見えます。

ところが、図に出ている年金特別会計全体の歳入と比べると、保険収入は54.36兆円の約1.42%、拠出金等収入は23.16兆円の約1.42%、他会計からの受入は13.84兆円の約1.42%と、確かめた主な項目は同じ割合でした(計算は当サイト)。会計全体の収入を同じ割合で割り当てた表示と読めます。この読み取りは当サイトの計算によるものです。財源そのものは、制度の資料で確かめてください。

このほか、財政余力や負担の比較は仮定に基づく試算で、利用規約に「将来の予測ではありません」と書かれています。「試作」「試行」と表示された機能は開発途中のもので、内容が変わることがあるともされています。

AI評価の読み方

政府予算ビューの評価一覧の画面。AI評価は独自基準で政府の公式評価ではないという説明が書かれている
画面:チームみらい 政府予算ビュー(https://rs-vis.team-mir.ai/・2026年11月4日確認)。元データは行政事業レビュー見える化サイトで、運営者が編集・加工したものです。

評価一覧では、5,794事業に0〜100点がついています(2024年度実績・総合点の平均65、中央値66)。画面の説明によると、運営者が定めた独自の基準でAIがシートの公開記載を採点した試行で、政策上の判断も含み、政府の公式評価ではなく、人によるレビューも経ていません。

総合点は5つの指標の重み付き平均です。指標は成果設計(15)、検証可能性(15)、執行透明性(15)、費用対内容(35)、代替困難性(20)で、かっこ内が重みです。どの指標をどれだけ重く見るかは、運営者が決めたものです。

たとえば児童手当の事業は総合69点、検証可能性23点、執行透明性35点でした。この点数は児童手当という制度の良し悪しを決めるものではありません。サイトも「事業の良し悪しを断定するものではなく」、詳しく確認したい事業を探す目安だと説明しています。「見直し候補」(50件)についても、結論ではなく議論に回すための候補で、下位にあることは廃止が妥当であることを意味しないと書かれています。

1者応札・随意契約の見方

事業者のビューには、1者応札(競争入札で応札が1者だけだった場合)の割合や、競争なしの随意契約の額が法人ごとに並びます。どちらも、それだけで不正という意味ではありません。

  • 財務省の2009年の資料は、1者応札の要因の類型として、業務の特殊性・専門性、地理的条件など必要な条件、過去の契約実績がある者が有利な分野、参加可能な者が少数の場合などを挙げています。
  • 会計法第29条の3第4項は、契約の性質又は目的が競争を許さない場合、緊急の必要がある場合などは随意契約によると定めています。
  • 同じ財務省の資料は、実質的な競争性を確保するための改善方策も定めています。競争が十分かを点検する視点も大切です。

サイトの説明にも、これらの論点は「確かめる手がかりで、不適切さの判定ではありません」と書かれています。個別の契約を判断するには、契約の内容や理由を公式資料で確かめる必要があります。

気になる数字を公式で確かめる手順

  1. 公式シートを開く:事業のパネルの「RS」リンクから、行政事業レビュー見える化サイトへ移動する
  2. 年度と金額の種類を確かめる:当初予算・執行額・翌年度要求額のどれか、何年度の数字か
  3. 全体の金額は予算書・決算書で見る:財務省の予算書・決算書データベースや「予算のポイント」を開く

政府予算ビューの利用規約にも、正確性を保証せず、正式な情報は各公開元の原資料を確認するようにと書かれています。

出典・注意書き

基準日:2026年11月5日時点(画面の表示と公式資料は2026年11月4〜5日に確認)

ご注意

  • 政府予算ビューの数字は、基準日に画面で確認した表示です。データや機能は変わることがあります。正式な情報は各公開元の原資料でご確認ください。
  • この記事は、特定の政党・政策への支持や不支持をすすめるものではなく、特定の企業・団体の評価をするものでもありません。
  • 割合や照合は当サイトが公開の数字をもとに行ったもので、全項目を調べたものではありません。
  • この記事は金融商品をすすめるものではありません。下の関連記事で扱うiDeCoなどの投資には、元本割れの可能性があります。投資や投票の最終判断はご自身でお願いします。

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